バラとチューリップの

植物だからって 感情や痛みが無い訳ではない。
実は 植物にも感情や痛みもあるのである。
有名なところではサボテンであるが、それは実はどの植物でも同じだ。

それどころか、植物にでも夫婦は存在する。
雄雌の区別がないので、好き嫌いのつがいではあるのだが。
たいていは同じ種類の植物が、夫婦になるのだが、
好き嫌いで夫婦になるので、たまに え!と驚くような夫婦もいる。

ここの夫婦もその一組みである。

バラとチューリップの夫婦が存在する。
バラはチューリップの素直さが好きで
チューリップはバラの気品が好きだった。

2人はどうしても 子どもが欲しかった。
なんども ミツバチに頼んで お互いの花粉をやりとりしたのだが、
こどもは出来なかった。

あるとき、ふたりの間にたんぽぽの種が舞い降りた。
ちいさくて かわいい種だった。
うまく発芽するかもわからなかったが
小さい命は無事にすくすくと育っていった。

子どもは2人を本当の親だと思っていた。

「ねえ、父さん
 どうして僕には棘がないの?」
「父さんはお前を守るために棘が生えたんだよ
 それまでは 無かったさ」
「ねえ、母さん
 葉っぱの形が違うのはなぜ?」
「お前に栄養をあげるために
 お前より大きい葉っぱになったんだよ」
と ごまかして来た。

やがて、花が咲く時期になり、
すべてがごまかしきれなくなっていた。

すべてを話したバラとチューリップに
たんぽぽは ショックを隠しきれずに
黙ったまましばらくが過ぎた。

花も枯れたたんぽぽを
バラとチューリップとても心配した

やがて、たんぽぽに種がつき、
たんぽぽの種が旅立っていった。

「ありがとう おじいちゃん」
「ありがとう おばあちゃん」
「大好き おじいちゃん」
「大好き おばあちゃん」
みんな、たんぽぽが言えなかった言葉を
口々に語って 旅立っていった。

バラとチューリップにとっては孫とも言える存在だった。

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