どこまでも続く道。
茶色い犬が大慌てで走っていく。
僕は呼び止めて、
「なにをそんないあわてているの?」と聞いてみると
「ラブレターを渡しに行くんです。」
「そんなに、慌てて、ずいぶん好きなんだね」と冷やかすと
「いいえ」
「僕は会った事もありません」
「でも、ラブレターというからには好きなんでしょう?」
「いいえ」
「このラブレターは僕の家の右隣に住む猫さんのラブレターなのです」
「僕はその猫さんが好きなのです」
「だから、一生懸命走っているのです」というので私は
「君は猫さんが好きなんだろう?」
「だったら、そんなラブレターは渡さない方がいいんじゃないか?」と言ったら
『・・・・?』と意味が判らないというような顔をしていた。
「もし、ラブレターを渡せば、君は失恋してしまうかもしれないよ」
「僕は犬だから、最初からうまくいくと思っていませんよ」
「それより、彼女の為に一刻も早く届けなければ」
「まあ、そうなんだろうね」と、自分の嫌な心を見せてしまった事を恥じて
「がんばってくれたまえ」
「はい」といってまた慌てて駆け出した
「おお〜い、最後にそのラブレターの相手は誰なんだ?」
「わからないんです。」
「ただ、これを持って、ずーと、ずーと右へ行って地球を回って最後のところまで持っていって渡してくれ と言われたんです。」
私はしばらく考え込み
しばらくして大きな声で、を叫んだ。
「おおーい、地球が丸い事を君は知っているのか?」
犬はもう、見えないくらい遠くへいってしまった。
この恋がうまくいく事を祈って空を見上げた。

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