迷子の子猫ちゃん その1

ある十字路で猫が
「すいませんが、私の家に帰る道を教えていただけないでしょうか」と聞いて来た。
私は驚いた。
なぜ、猫が私に解る言葉をしゃべっているのか?とても不思議に思い、黙っていると
「お願いです。私は家に帰りたいのです。
道行く人々は不親切で、にゃんにゃん言う私の言葉に振り向いてもくれません。」
私は目を閉じて大きく深呼吸をして
「右!」と、答えた。
「え?」
「だから、右だよ!君の家は右の道を行けばいい」
「それだけでは、あまりにも不親切
もっと丁寧に右に100m左に200m、その次の信号を左とか、
言ってもらえませんか?」
「いや、だって右しかわからないもん」
私は困ってしっぽをふった。
「君の匂いは右の道にもついているの。だから右!それ以上は知らない」
「だいたい、なんで君は犬語を話せるんだ?」
子猫は
「え、私はバイリンガルだから」
「バイリンガル?」
「2カ国語しゃべれるってこと!」
「私の家には犬も一緒に飼っていたのよ。
私より少し年上のそれはきれいなお姉さん!」
「へー」とまったく興味のないふりをしながら、
「ところで、その綺麗なお姉さんは、どんな風に綺麗なんだい」
「、、、」
「いや、別に興味はないんだがね」と顔をそらしたが、
反射的にしっぽを物欲しそうにふった為に気がつかれてしまったかも知れない。
「それはそれは、とても綺麗よ
身長はスラーとして少し高め、
透明な青い目がとても印象的。長く白い毛がいつも輝いているの
お姉さんが街を歩くと誰もが振り返るわ
そして、歩いた後にはとってもいい匂いがするの」
「へーそうなんだ」
「まあ、そんなものには興味は無いんだが
君が迷子でかわいそうだから、君の家探しを手伝ってあげるよ」
「もちろん、君がそのきれいなお姉さんに、とても親切でかっこいいお兄さんにつれて来てもらったの。って言っても、それは自由だけどね」
そういいって子猫と僕の小さな旅が始った。

迷子の子猫ちゃん その2

子猫の匂いのする右へふたりで歩いていると、すぐに匂いが途切れてしまった。
少し、立ち止まっていると
「そういえば、塀にのぼっていたわ」
なるほど、かすかに上の方から匂いが漂ってくる。
塀の上の匂いをたよりに進むと塀の上に止まっているペンギンがいる。
「?」
いったいなぜ、こんな処にペンギンがと心で思っていると
子猫が
「ああ、そういえば、あのペンギン行きの時にもいたわ」
僕は「わんわん」と吠えたが、
ペンギンは一向にかまいもしない。
犬はへの上にのぼらないのを良く知っているようだ。
先へ進もうとすると子猫がなにやらペンギンと話をしていた。
「ぴ−ちく、ぱーちく」
「君はペンギンの言葉も話せるのかい?」
「ええ、私の家には小鳥もいたの
だけど、ひどいなまりね。あのペンギン」
たいしたものだと思いながら
「で、君の家はわかったのかい?」
「いいえ、知らないそうよ
行きのときは頭の上を超えていったので、ひりひりしているそうよ」
「そうか、じゃ先へ行こうか」
「ええ、」
そういってまた僕たちは歩き始めた。

 

迷子の子猫ちゃん その3

子猫の匂いを嗅ぎながら、歩いているが
ちょこまか、ちょこまかと動き回っているらしく、
あっちこっちに匂いがばらまかれている。

絡まった糸を紐解くかのように丁寧に匂いを嗅ぎ分けて、歩いてゆく。

「お腹減った〜」
「家につくまでがまんしろよ」
「いつ着くの?」
「そんなこと、知るかい。自分の方がわかるだろう?」
「わかんなーい。おなかへった。」

時間はちょうどお昼時らしく、
家々から、それはいい匂いがしてくる。
子猫じゃないが鼻の敏感なおいらでもお腹が減って来た。

しかし、ご飯を手に入れる手段はもっていない。

「我慢して、行こう
 いえにつけば、おいしいものが食べられるよ」
「は〜い、役立たず!」
ム!としながらも、僕たちは前へと進んだ。

 

迷子の子猫ちゃん その4

子猫と塀の上の道を匂いを嗅いで歩いていると
気持ちよ良さそうに眠っている三毛猫がいる。
独特の雰囲気で風格漂うこの猫に
「あのーすいませんがどいてもらえますか」
「・・・・」
「すいません。ここを通りたいんですけど」
「我が名は昼ネ大国ぽかぽか大王であるぞ」
「はあ〜、えらいんですね。すいませんが、、」
「ここは我が領土ぽかぽか塀の上3丁目であるぞ」
「はあ〜、すいませんが、この子が迷子でして、匂いでこの子の家を探しているんですよ」
「私の知らない物はない。私が知らない物もない」
「はあ〜、なんでも知ってるんですね
あの〜じゃあ、この子の家を教えてください」
「その子は物か?」
「はあ?」
「私の知らない物はない。私が知らない物もない」
「物では無いですけど、、、、この子家は物だと思います」
「では、この道のどこかにある。道は続いているはてしなく」
「はあ、じゃあ、どいてもらえますか?」
「私は国王じゃ」
「知ってます。ぽかぽか塀の上3丁目ですよね」
「行くが良い。道は続いている」
っと言ってお昼寝中の国王はどいてくれた。
「すべての猫は国王である。」
「あ、そうなんですか?じゃ、こいつも国王なんですかね?」
「うむ、いずれ国王になるであろう。」
「今は王子ってところか?まあ、女だから、いずれは女王ね。猫の世界もたいへんだ」
「まあ、いいや早く行こう」

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