僕は水。

僕は水。
コップ1杯分の水<`r>ほんの少しだけの時間
地面に表れている
あと、数時間もすれば、
僕は地面にすべてを吸収されてしまうだろう。
静かに、あまりにも静かに僕は君を待ち続けた。

君は蛾。
大きな蛾。
すこし灰色がかった模様が印象的。
暗闇に光を求めて羽ばたいている。
同じような蝶は多くの人から愛されて
君は忌み嫌われている。
でも、僕は君を待ち続けた。
理由は簡単。
僕が表れた時に君が目の前を通った。
僕がはじめて見た世界
それが君。
暗闇に鱗紛をきらきらと撒き散らかし
それが消えて無くなるまでの少しの時間
君の美しさに見とれていた。

僕は水、ほんの一杯の水。夜明けまであと数時間の命
君に逢う事はもうないのだろう。
あきらめた時に君はやって来た。
君は僕の目の前で立ち止まった。
君はストロー状の口を僕の中に入れ
僕を飲み込み始めた。
ほんの少しの僕が君の中へ入って行った。
僕は君の体内に入り、君を感じた。
君の中には、君の子供達がいて
僕の一部がまた、その子供達の中へと吸い込まれていった。
僕は君。僕は君の子供達。
僕はもういないけど、
僕は君になって
太陽の下を飛び立っていった。

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