魚と神様

昔まだ魚に足があったころ
それはとても早い足だった。
世界はまだ小さかったから、
彼らはその足で世界のどこへでも素早くいけた。
魚は言った
「神様、俺とかけっこをしないかい」
神様はいやがった。
「勝負をしてくれるなら、俺は何を賭けてもいいぜ。」
神様はいやがった。それでもしつこく魚は言った。
神様はしぶしぶ競争をした。
ゴールは8つの丘を越えた針葉樹のところだった。
冬だったのでそこだけ緑で、遠くからでも見えたからだ。
競争が始まった。
魚は真っ先に飛び出し、すごいスピードでゴールを目指した。
神様も一生懸命走ったが、魚のスピ−ドには、ほど遠いモノだった。
やがて魚がゴールしようとしたその瞬間
神様は3本の髪の毛を矢に変えた。
そして魚に突き刺した。
1本は右足、1本は左足
そしてもう一本は喉を
突き刺した。
ゴール一歩手前で魚は倒れた。
やがて神様がゴールした。
足下には今と変わらぬ魚がいた。
魚はいくら口を開けて悪口を言っても
もう言葉にはならなかった。

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