裸の王様

昔あるところの、ものすごくファッションに気をつかう王様がいました。王様は毎日のように服をつくらせ、一日何回も着替えをしました。それでもあきたらず、「もっと服はないのか!もっと今までに着た事がないような服はないのか」と回りに当り散らしていました。
王様は召使を国内外に派遣して、優秀な服飾士を呼び寄せ、服を作らせました。しかし、いくら服を作ったところで王様が満足することはありませんでした。
国民はそんな王様に嫌気がさしていました。「ただでさえ貧乏な国が王様の道楽に、ましてや女でもない王様にそんなたくさんの服がいるだろうか?国民の血税はもう到底払いきれないところまできているというのに」と国民の誰もが思っていました。
ある時、とおくの国から2人の服飾士がやってきました。
「王様、私たちは世にも素晴らしい糸をもっています。ぜひともこの糸で紡いだ王様の服をつくらせていただきたいのです?」
「糸?」王様は言った。
「はい、ここに御座います、7色に光る糸はバカには見えない不思議な糸でございます。」「どうぞ、この素晴らしい光沢、まるで持っていると思えないような軽い手触り、七色に輝くこの色、王様どうぞ、触ってみていただけないでしょうか」とうやむやしくさも糸があるかのように王様に差し出した。
王様に糸は見えなかったが、周りにいる大臣たちの手前、自分がバカだというのを認めることはできなかった。
「うーん、素晴らしい糸だ、どうじゃ大臣ども この光沢?」
大臣たちは「まったく素晴らしい光沢でございます。色も今までに見たことも無いような色で、本当にこれは素晴らしい洋服になるでしょう」「本当に出来上がりが楽しみだ」周りの大臣たちもこぞって褒め称えました。「うむ、では早速とりかかってまえれ」王様はいいました。
ありがとうございます。二人は見えない糸をうやうやしく掲げました。
遠くからきた服飾士達は最上の部屋を与えられて、毎日毎日糸を紡いで布を織り、服を作り装飾をしていきました。トントンジャキジャギと布を織ったり、はさみを使った音が部屋中に響きわたりました。1ヶ月たち2ヶ月たち3ヶ月も終わろうとするときに、ついに服が完成しました。
2人はうやうやしく
「王様 世にも珍しくも素晴らしい美しい服ができあがりました。」と差し出しました。
「うむ、着てみよう」といって召使いを呼んで着替えを開始しました。
服飾士達は頭を下げたままうやうやしく服を差し出しました。
召使いが今着ている服を脱がせてゆきます。
全裸になった王様に服飾士達から取った服を召使い達がさも着せているように、着替えさせます。
服飾士達は王様の素足だけが見えます。それを見て「美しい足だな」と思いました。
お城の出入り口から笛がなります。いつものように王様の新しい服が出来たときの行進です。国民達は渋々大通りに向かいました。
実は国民達は王様の道楽にはほとほと嫌気がさしていて、今日こそは王様をどうにかして捕まえて処刑できないものかと考えていました。それほど、国民の生活は必迫していました。
「王様のおな〜り〜」
殺気だった国民が王様の行進を見つめます。
いつものように見ていた先頭のモノが目を丸くして驚きます。
そこに現れた王様はまぎれもなくうまれたままの姿の王様でした。
だれもがイキをのみました。
今まで王様の肉体には分厚いセンスのない宝飾がほどこされた服にさえぎられていました。誰も見たことがない王様の裸がそこにはありました。
「う、美しい」誰もがため息混じりに言いました。
王様の肉体はそれはそれは均整のとれた、まるでこの世のモノとはおもえないくらい美しい裸体をしているのでした。
すらりとのびたしなやかな足はどこまでも長く、筋肉質のツンと上を向いたお尻が天を指しているようでした。しなやかに割れた腹筋はとても細いのですがその上の大胸筋から、三角筋、腕までがまるで天使の羽のように光り輝いています。
まるで、天使、いや神様の持つ肉体のようでした。王様の中性的な均整のとれた顔も神々しさを倍増させていました。
「王様万歳!」ひとりの国民が叫び出すと狂ったように群衆は「王様万歳」を繰り返しました。「ブラボー王様!」熱狂的な歓声がどこからも聞こえます。
ある一人の子供が「王様ははだか・・」と言うが早いが子供の口を母親があわててふさいで、王様の肉体を目に焼き付けようと「王様万歳!」と言いながら、涙を流しながら、手を振ります。
「王様万歳!」「王様万歳!」
熱狂的な歓声は鳴りやむことはありませんでした。
ホンの少し前まで処刑をしようとしていた国民達が今は熱狂的に王様を支持しています。王様の美しい肉体に誰もがため息をし、歓声を上げています。王様の透けるような白い肌がよりいっそうカリスマ性を引き上げます。老若男女すべてを魅了します。その歓声は永遠に続きました。
その後、国民は王様を心から敬い、王様は国民のために働きました。
めでたしめでたし

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