クリスマスとプレゼントと妻

24日の朝おきたら
枕元に赤いくつしたがおいてあった。
中を見ると、指輪が入っていた。
プラチナのようなシンプルな指輪だ。

なんだろう?
指輪をよく見ると
MerryXmasと彫ってある。
だれかのプレゼントだろうか?

指輪をしてみると、ぴったりとわたしの指に入った。
まるで、何年もしているように、違和感も無く
体の一部のようだった。
不思議な事もあるものだと思い、
ふと回りを見回すと
サンタがいた。いや、正確には鏡にサンタが映っている。
「誰だ!」というと
鏡のサンタも同じように「誰だ!」といっている。
手を挙げるとサンタも手を上げている?
いったい?
あごをさわるとサンタもあごをさわっている。

何よりもおかしいのは、わたしの手の感触に豊かな髭の感触がある事だ。
「これは、わたし?」
サンタも同じように口を動かした。

どうやら、鏡に映っていたサンタはわたしだったらしい。
わたしはサンタになった。
しかし、トナカイは?
ソリは?
プレゼントは?

と思ったとき
シャンシャンと鈴の音が妻が寝ている寝室から音がした。
ドアを開けると妻のパジャマを着たトナカイが
プレゼントいっぱいに積まれたソリに繋がれていた。

「志津江?」トナカイは
ぷるるっと返事をした。
「やっぱり、お前か?」
頷いたトナカイは足をゆっくりと蹴り上げ、
今にも走り出しそうだ。
「どうやら、選ばれてしまったようだな」
わたしは、笑いゆっくりとソリに乗り込んだ。

サンタになったからだろうか?
わたしは、プレゼントが配りたくてたまらない衝動にかられていた。

「はいど〜」とタズナを引くとソリはドアを突き破り飛び出していった。

自分の街がすぐに米粒になり
地球の丸さが感じられるまで登ると
ものすごい早さで地球の裏側に走った。
プレゼントはどうやら、空の上から投げ入れるだけで
子供たちの枕元に届くようだ。
それから、いくら配ってもプレゼントが無くならない。
まったく、不思議なものだ。
もっとも、自分自身がサンタになっているのが一番不思議なのだが。

もう、何時間プレゼントを配っただろうか?
わたしの感覚では、もう丸一日以上配っているような気がする。

気が付くと、わたしは自分の家の前に立っていた。
窓から、妻の寝室に戻り、気が付くとソリも無くなり、
トナカイかと思ったシルエットが寝ている妻に変わっている。

最後に残ったプレゼントは3つ
妻の回りにすやすやと寝ている子供たち2人にひとつづつ
最後に残った一番小さなプレゼントは妻の横に置いた。

「疲れた」と呟いて指輪を取ると
いつの間にか指輪は消えていた。
わたしは泥のように眠った。

翌日
妻はいつものように朝ご飯を作っていた。
夢だったのだろうか?
「メリークリスマス」
と妻が笑ってプレゼントを手に取りウインクをした。

やはり、夢などではなかった。
わたしは妻になんのプレゼントも用意してなかったからだ。

何も変わらないと思っていた妻だが、
よく見ると、鼻の頭が少しだけ赤くなっていた。

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