サンタロボット

時は2981年、今年もクリスマスがやって来た。
国連法で定められたとうりに
約3万台のサンタロボットは
中央タワー「マザー」から世界へ
一昔前のジェット機並み以上のスピードで飛び出していった。
マザーは言った。
世界中の子供達におもちゃをプレゼントするのです。
たとえ、新米だとしても、失敗は許されませんよ。

今回がはじめての新米ロボットは、この言葉にどきどきしていた。
もともとは、老人介護ロボットである新米は、はじめての子供相手の仕事である。
ドキドキしないほうがおかしいくらいなのである。

いくらサンタロボットが不足しているからと言って、
気の弱い介護ロボットとしてはこんな大役はごめんこうむりたかったが、
マザーの命令はぜったいである。
心やさしいロボットではあるので、マザーが選ぶのも無理はないのだ。

とりあえず、4.5件は無事にすませた。
ただ、ふつうのサンタとちがうのは彼が介護ロボットであること。
ふつうのサンタロボットでは、あたりまえにプレゼントを置いて帰っていく。
しかし、介護ロボットである新米は、まず、体温、血圧、脈拍、
へたをすれば、血液検査、レントゲンまでやりかねない勢いで健康診断を、
ひととおり済ませてからプレゼントを置いていく。
気持ちは予防接種がプレゼントになりかねない勢いだ。

しかし、サンタに気がつかれてしまっては元も子も無い。

予防接種はぐっとがまんして
プレゼントをおいて出て行った。

ところが、今、新米サンタの目の前にいるこの子は熱が40度ある。
ふつうのサンタなら、寝ているだけの子供を見逃しただろう。
介護ロボットの新米サンタはどうしても見逃す事が出来なかった。

受け持ちはあと150件、どう考えてもすれすれである。
プレゼントを配り終えないと残りの子供は今年はプレゼントが無しという事になってしまう。
だいたい、あと150件もくばれば、この季節、風邪をひいている子供は何人もいるだろう。
となれば、ふとんで寝ているのだから、ほっておくのが一番なのだ。

介護ロボットである新米サンタはそんなことを百も承知で看護をはじめてしまった。
この子の親が見当たらないのも気になる事であった。
もちろん、親に見つかってもいけないのだが、
この家に他の人間がいる反応がないのである。

しかし、熱があと2度さがれば、プレゼントくばりを再開できる。

介護ロボットは心を込めて最善の看護をした。

明け方、やっと、子供の熱が下がった。
これでとりあえず、一安心と、
プレゼントの他に薬の袋をおいて出て行こうとした時、

ドアが開いた。

親がやっと帰ってきたのだ。

運が悪い事に鉢合わせをしてしまった。

マザーにどやされることだろう。

介護ロボットの新米サンタが閉じた目をそっとあけると

目の前には

本物の人間のサンタがいた。

そうか!あの子はサンタの子供だったのだ。

だから、このクリスマスイブの日にいなかったのだ。

本物のサンタは、すぐに状況を察知した。

そして、ありがたいことに、この新米サンタロボットの残りのプレゼントを一緒に配ってくれたのだ。

さすがにこの道何十年?

心配したプレゼント配りはあ!という間に終わった。

それはそれは、本当にあ!と言う間であった。

介護ロボットである新米サンタは胸を撫で下ろし
サンタに感謝した。サンタは介護ロボットに感謝した。

くたくたに疲れた介護ロボットは
家に帰ってバタンとベットに倒れた。
それにしても、疲れたと帽子を脱ぐと
なんと、本物のサンタから、プレゼントが頭の上においてあった。

くすっと笑いながら、中を見ると
小さなロボットのおもちゃが入っていた。

もう一度笑い、介護ロボットはまた来年もやってもいいかなと
思いながら
OFFのボタンを押してベットの中に入っていった。

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