先輩と後輩 4


「先輩!
 先輩!」

「ん、なんだ?…
 夢を見ていたよ
 医者にいって…」

「それ、夢じゃないっす」

「ん、ここは?」

「たぶん、牢屋っす!」

「え!
 ああ、牢屋だな

 おおーい
 おーい
 だれか〜」

「なんだ、おきたのか?」

「おまわりさん
 俺たち、いったいなんで
 こんなところにいるんすか?」

「医者に、とんでもない暴言と
 行動をしたんだって?」

「とんでもない!
 ただの治療ですよ!」

「宇宙人の話は?」

「それは…」

「看護婦の悪口は?」

「それも…」

「もうちょっと入ってもらおうか
 メシでも食うか?」

「はい」

 

「うまい!」

「先輩大げさだな」

「これは、いったい?」

「カツ丼ですよ
 定番じゃないですか
 まさか
 知らないんですか?」

「うわさには聞いた事がある
 これが…そうか
 ついに俺にも食える日が来たんだな」

「まるで、出世したみたいですけど
 実際は反対ですから
 だけど、
 たいした味じゃないっすよ」

「いや
 おれんち
 貧乏だったから」

「はあ?
 どんな食生活だったんすか?」

「まあ、
 メシは
 御飯のようなものと
 おかずは
 屁をして
 その匂いでな」

「おかずが屁って
 すごい貧乏ですね
 それに御飯のようなものって
 いったい?」

「知らんか?
 御飯のようなもの?」

「御飯では…?」

「ない!

 まあ、しかし
 それは冬の事だから
 ほら、春になれば豪華だぞ」

「はあ?」

「桜とか、チューリップとか
 菜の花とか」

「咲きますね。食うんすか?」

「ああ、うまいよ」

「まあ、屁よりは…ねえ」

「夏はもっとすごいぞ
 カブト、クワガタ、油蝉」

「昆虫採集じゃあ…」

「まあ、秋が一番だけどな
 何でも食えるし」

「いや、何でもってことは
 無いような?」

「しかし、うまいなカツ丼」

「なんか、先輩の話を聞くと
 このカツ丼がすげーうまく思えます
 あれ?なにかけてるんすか?」

「ん?フケだよ
 動物性タンパク質だ!」

「いや、先輩!
 これ、動物性タンパク質の塊ですから」

「あ、そうなの?
 じゃ、とっとくか!」

「いや、取っておかなくちゃ
 ならないものでも…
 しかし先輩、よく大学通えましたね」

「ん?通ってるんじゃないぞ」

「え?」

「俺はな 住んでるんだ!
 もう6年にもなるかな
 小学卒業からだからな」

「え!ちょっと待ってください
 先輩いくつなんすか?」

「えー、
 俺、計算苦手なんだよな」

「って計算も出来ないって
 小学卒業が12才で6年ってことは…」

「ってことは?」

「先輩、18っすか?
 俺より3つも下じゃないですか!」

「じゃ、お前のほうが
 先輩か!」

「ていうか、大学生でもないでしょ?」

「ん?あそこにいるのは
 みんな、大学生だって言われたぞ!」

「いや、他のみんなは大学生ですけど
 先輩、ただの浮浪者ですよね!」

「大学6年生じゃないのか?」

「いや、試験もなにも受けてないでしょ?」

「たまに、受けてるぞ!
 よく判らんが」

「それ、期末とかですよね?」

「ん〜?」

「大学にお金入れてます?」

「学費ってやつか
 あれは振込なんだろ!」

「振込ですけど
 ちゃんと振り込んでます?」

「ラーメン食うときはちゃんと払ってるぞ!」

「いや、学食じゃなくて、学費ですよ」

「そんな事言われたことないし…」

「学生じゃないからですよ!」

「俺がフミヤだったら
 そんなややっこしい事言われないのな!」

「全然、ややっこしくないですけど…

 でも、いいっす
 おれ、先輩のそういう所に惚れたんですから」

「それは、
 俺がフミヤだったとしても
 いうのか?」

「どうなんでしょうね?」

「どうなんだろうな?」

「あはははははははは」

「あはははははははは」

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