女のもて方

「先輩、女のもて方教えてくださいよ!」

「おんな!どんなのがいいんだよ!」

「いや〜、やっぱ、美人がいいっすね」

「美人!?
 馬鹿言っちゃいけないよ!
 美人と言えば、クレオパトラだろ!
 ありゃ〜、化粧濃いぞ〜。
 鼻もタケーし、 あいつは鼻持ちなんねーぞ!
 それに、楊貴妃、
 あいつだってだめだ!
 寝てばっかりいるし、
 掃除も洗濯も ぜんぜん出来ねーし、
 やめとけ!美人なんて!」

「古いっすよ」

「ばかやろー、今も昔も根本はかわんねーよ!
 じゃ、なにか!
 お前が美人にもてる可能性がこれっぽちもあるっちゅーのか!」

「いやー、まあーねー、俺だってお金さえ持ってれば…」

「かね!?金か!
だからお前はダメなんだよ!
金なんて持ってたらもてねーぞ!」

「え!もてないんですか?」

「当たり前だよ!
 じゃ、おまえ、今世界一の金持ちビルゲイツ!
 あいつもてるか?」

「わかんないっすけど?」

「もてないよ!ゲイツ!
 あいつがもててるって話聞いた事無いだろ!
 チョコレートもらったってニュースでやってたか?
 やってないよな。
 金なんてだめだ!
 金を持ってたら、本当の愛がわかんなくなるんだよ!」

「そうっすかね?」

「そうだよ!
 じゃあさー、高額納税者にチョコレート、
 トラックできますか?
 高額納税者が歩くと、若い女がキャーキャー言いますか?
 どうだ!」

「どうだ!って言われても、
 まあ、キャーキャー言われないっすよね」

「そうだよ。金じゃないんだよ。」

「やっぱ、歌ですかね!
 ほら、ミュージシャンなんてもてるじゃないですか!」

「ダメ、ダメ!
 お前がやったら、回りが引いちゃうよ。
 あまりにキモくって、
 カラオケしてる時の回りの引き方、気が付いてないのかよ」

「えー、そうだったんすか!
 どうりで、俺が歌ってるとき、みんな本見てると思ったら」

「そうだよ、みんな、お前をまともに見れなかったんだよ
 カエルだってもうちょっとうまく歌うぞ!ゲーゲーって」

「ウシガエル以下っすか?」

「そんなもんじゃ、きかないよ。
 死んだじいさんのしゃれこうべをカチカチしただけだって、
 もうちっとまともだよ」

「おれ、そんなにひどいんですか?」

「ウィーンなら射殺だよ!あそこ、厳しいらしいよ」

「おれ、ウィーンにはいかないです!」

「たぶん、入国のところで聞かれるだろ。斉藤寝具店って
 あそこで、バーン!だよ」

「歌も歌ってないのに?」

「そうだよ。
 ウィーンだよ。耳が肥えてるんだよ。やつら。
 歌わなくても、ばれちゃうよ」

「わかりました。歌は止めます」

「よかったよ。命あっての…だもんな!」

「じゃ、がんばって勉強でもしようかな?そうしたら…」

「ダメダメ!学者なんて一番もてないよ。
 アイドルでひとりでも学者と結婚したヤツがいるか!」

「そういえば、いないっすね」

「そうだよ。だめだよ。勉強なんかしちゃ」

「じゃ、お笑い!これなら、不細工でもモテルんじゃないですか?」

「まあ、今はやってるしな。いいんじゃないか」

「そうですか?じゃ、お笑い目指そうかな」

「ひとつだけ、言っとくと
 今、流行ってるってことは、
 これから先は流行らないってことだぞ!」

「え!」

「あたりまえだよ。流行に乗るものはいつか置いて行かれるんだから
 そうしたら、悲惨だぞ。
 多分、この道の30m先のタバコ屋のおばちゃんの、
 ちょっといった所に電柱あんだろ」

「はい」

「そこに、4月になると、花が咲くんだよ。ど根性雑草」

「はい?」

「それ見ながら、お前死ぬな。
 のたれ死にだよ。」

「え!」

「流行にのれなくて、金もないお前は、それでも冬を乗り切るんだよ。
 暖冬だから
 でも、春が来たら、もうだめだ。」

「なんでですか?」

「異常気象だよ
 夏が暑いのは我慢出来るんだよ
 砂漠にだって人間はいるんだから
 でも、
 春が暑いのは、ダメだ
 売れない流行遅れの漫才師のお前の体は限界だったんだよ
 4月なのに40度って
 もう、死ぬしか無いでしょ。
 でも、お前はがんばった。
 タバコ屋にアイスを買いに来たんだもん。
 でも、残念な事に」

「残念な事に?」

ごくり

「タバコ屋のバーサンも死んじまったんだよ。
 この異常気象で」

「あー、タバコ屋、閉まってる!」

「そうだよ!
 もう、部屋に戻る体力なんて無いよ
 アイスを買うはずの60円を握りしめて
 おまえは、3歩あるいて、バタンだよ
 目の前にはきれーな雑草の花が咲いてるんだよ
 そこで、一言!」

「ザ,ザ,ザ,ザ?
 ザツ、ソウ、ライ?(that all right)」

「そうだよ。それが最後のお前の言葉だっただよ」

「やっぱ、やめます!おわらい!」

「うん、それがいいかもな」

「じゃ、体鍛えます!
 体力あれば、異常気象でも死なないし、
 スポーツ選手になれば、もてそうですし」

「あー、ついに出ちゃった。
 体育バカ!
 いいよ、モテルよ。スポーツマンは
 だけど、もてても、お前

 理解できないよ」

「え!?」

「もう、体育バカになっちゃうんだから
 もてるってことがわかんない脳みそになってんだよ

 やつらは、栄養を上腕二頭筋とか、わけわかんない場所に
 つぎ込んじゃうんだから
 栄養が頭に回らないよ
 それを何年もやってごらん
 
 脳みそは栄養失調でスカスカよ
 
 そして、プロテイン!
 もう、おしまいだよ
 モテルかわりに、それを理解するオツムはもう無くなってるよ」

「あちゃ〜!そうだったんですね!」

「そうだよ。もてても意味ないぞ」

「そうか〜、じゃ、どうすればいいんですか?」

「今言った事あるだろ。それと反対の事をやればいいんだよ
 逆説論法だよ。」

「そうか!先輩、あたまいいっすね
 え、と、
 運動しなく、おもしろくなく、頭も悪く、歌も歌えず、金もない
 え、と、

 先輩みたいな人ですね!」

「そうだよ。それが一番もてるんだよ!」

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