楽園

私は科学者であり、歴史学者でもある。
長い人生でもう大半を使い果たしてしまった。
私の研究は私以外に誰もやってないだろうから、
私の残された人生で、発見しなければ、この研究はまったくの無になるだろう。

わたしは大半をここアフリカの地でかなり古い地層を掘り起こす事に使ってしまった。
わたしの研究とはアダムとイブのいた楽園を探しているのだ。
そして、イブがそそのかされて食べた「知の食べ物」を探しているのだ。
聖書などでは、りんごということになっているが、わたしの研究によると
どうやら、古代りんごに似た食べ物だという事までわかってきた。

なぜ、その果物を探しているかというと、
このくだものを口にする事で、
人類はイブが人間に進化したように
人類はまた、ひとつ変化すことであろう。
わたしはそう思っている。

新人類の誕生となるはずなのだ。
新しい、知能をもった人類は
かならずや、今地球で起きている問題を解決する事だろう
わたしはそう思っている。

命の危険もあるかもしれない。
しかし、そこを乗り越えれば、我々人類は未踏の地に踏み立つ事になるのである。
そんな、果物の種をわたしは
人類が誕生したと言われるアフリカの約6500万年前の地層から
探している。

しかし、ほとんどが化石になっており、もう、わたしの人生の間には
さがせないだろうとあきらめていたところ、
先日、アフリカで大地震があり、昔の地層が大量にめくれ出たと聴き、
わたしはあわててやってきたところだった。

なんと、驚いた事に、そこは石油が湧き出ていた。
その石油を丹念に濾過して出てきたものを調べると
今まで、見た事も無い種が見つかった。

その種はまるで宝石のように美しく若々しく真っ赤に光っていた。
色々調べた結果、約7000万年前から約6500万年前に間違えない新種の植物の種であることがわかった。

しかも、この種は石油という粘度なもので守られていた為に、発芽する可能性もきわめて高いらしい。
わたしはついに本物のアダムとイブが食べた果物を手にいれたのだ。
そう確信した。

その植物は無事発芽し、5年の後にたわわに果物を実らせる事に成功した。
それはわたしの思った通りに、新種の果物であった。

わたしは感慨にふけりながら、果物を食べた。

毒かもしれない?

食べ終わって少ししてそう思った。

体が異常に熱い、体の内部から何かがわき上がっていた。
そして、意識を失った。

それから、1ヶ月、わたしは死線をさまよった。

そして、目が覚めた時わたしは

「いや〜はずかしい見ないで!」
「先生、研究はどうなったんです?」
「いや〜はずかしい。研究?そんなものしらないわ〜」

どうやら、アダムとイブが食べた果物は
羞恥心を倍増させ、すこし、おつむが弱くなる薬だったらしい。

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