ご契約

ここは、チェーン店のラーメン屋、
毎日明け方までお店を開いている
深夜になると客の数は激減するが
今日もいつものように開いている。

このラーメン屋はチェーン店でありがちな
回りを鏡にして、たった数人の客を何人ものお客がいるように
狭い店内を少しでも広く見せようと工夫している。
中にはこの道10ン年のおちゃんと、
中国から留学生のヤンさん24才が、
「いらっさいませー」と元気な挨拶で真夜中でも挨拶してくれる。

真夜中、2時過ぎ、わたしは飲み屋の帰りに
ちょっとだけラーメンを食べたくなり
ついつい、その店に寄ってしまった。

「いらっさいませー」
いつものように元気な声だ
真夜中だというのに
わたしは右側の席の真ん中に座った。

しかし

めまいが

一瞬

飲みすぎだろうか?
めまいが一瞬した。
「何にします?」
わたしは目頭を押さえて、
目の前に来た店員に
「ラーメン」と答えた。
「ラーメン?ウハハハハ、お前本当にそれでいいんだな?」
飲み過ぎのせいか?、まだくらくらする。
わたしは目を閉じたまま、
「ああ、ラーメン頼むよ」
「ほんきか?…世界一のラーメンか?」
なにを言っているんだ。
ただのチェーンのラーメン屋のくせに

「いつもの、安いラーメンでいいんだ。ちょっと小腹が空いただけなんだ」
「ははは、変わっているな。ほら」
といってもう、目の前にいつものラーメンが出てきた。
わたしは少し目を開けてみる。

「これでいいんだな」
「なんだあるじゃないか」
「本当にいいんだな」
「いいもなにもこれだよ。俺が頼んだのは」

目の前には
いつものラーメンが
しかし、
なんだか、ラーメン以外が違うような?

頭を上げ店員をよく見ると
「しかし、お前、悪魔と魂の引き換えに
ラーメンを頼むとは変わったヤツだな」
ブーといきなり吹き出してしまった。

目の前には悪魔がわははと笑いながら立っていた。
「悪魔にラーメンを頼んだヤツは初めてだ」

わたしは驚いて回りを見てみると
そこにはラーメン屋の鏡の中だった。

「2時22分22秒22に
合わせ鏡を覗き込んで
ラーメンを頼むとは
人間とは不思議な動物だな」
「え、じゃあ、わたしは」
「お前との契約は立った今成立した。
お前はラーメンを、
私はお前の魂を、
無事貰い受ける事になった」
「さあ、冷めないうちに…」
と悪魔が高笑いを

私は目の前のラーメンを見て、
こんな安物のラーメンと自分の魂なんて…

二度と全面ガラス張りの壁のラーメン屋なんか入るものかと誓った。

もちろん、もう入れないが …………。

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