天国の階段

天国の階段を登る時は
僕は死んでいるもんだと思っていた。

だけど、今僕は、生きたまま天国の階段を登ろうとしている。

たまたまなのだ。
まるで、宝くじが当たるように
たまたま、僕の食べたドールのバナナにそんな当たりがついていたのだ。

もちろん、そんな懸賞がついているなんて、誰も知らない。

当たったものしか、わからないモノも
この世の中にはあるものだ。

神様の偶然だろう。

ドールのバナナを一口食べたら、
いきなり、大きな鐘がなり、天使が舞い降りて
色々説明をしてくれた。

3泊4日の旅行が当たったように
僕は天国へご招待されたのだ。

そんなこんなで、今は僕は天国への階段を登っている。

夢かと思った。
でも、どうにもこうにも夢ではないような気がする。

やがて、半分の距離まで来た時言った。

一旦休憩で〜す。

気が付くと回りには世界中から当たった人たちがいて休んでいた。

総勢、40人くらいの団体客だと言う事に気が付いた。

いつの間にか天使が旗を持っている。

喉が渇いたりお腹が減ったか方はこの泉の水をお飲みください。
とっても、美味ですが、物は落とさないようにしてください。
真実の女神が表れて、物々交換をさせられますよ。
天国では、金の小野も銀の斧もなんの価値もありませんから、
荷物になるだけです
お気をつけてください。

では、あと5分ほどで出発します。

となりの太ったヤツが
「あの〜わしはメシが食いたいんじゃがのお」と質問した。

泉の水を飲めば、全て満たされるはずですが
どうしてもと言うなら、ここのもの全てが口に入れても大丈夫なので、
お好きな物を食べてください。
「地面もたべれるのか?」
「はい、おいしいですよ」
そういうと、隣の太った男はおもむろに手を出し、
回りの物を食べだした。
「う、うまい!こんなうまいもの、今まで食べた事が無い!」
と、狂ったように食べだした。

それを合図に、約半数のものが、回りのいたるところを食べだした。

「じゃあ、出発します」
と言って進むと、僕たちは半数になっていた。
もともと疲れは無いから、休む必要もないのだが
これは、ある種の儀式のようだ。
半数は、さっきの休憩所で食べ続けていた。

本当の天国まで、いったい何人がたどり着けるのだろう?
と思いながら、天使の後に続いた。

しばらくすると、雪が降り始めた
いや、雪ではない
寒くはないから、
僕は天使に
「これは、いったいなんですか?」と聞くと
「これは、幸せです」
「たまに、天国から、幸せを降りまくんです」
「手の上にのせるとわかりますよ」
というので
僕は、雪を手の上に乗せた。
すると、ほんのすこし、温かくなったようで、すーと手の上で溶けていった。

こころも、温かくなったようである。

なるほど、これが純粋な幸せか、不思議なものだ。

「じゃあ、不幸とかもあるんですか?」と聞くと
「不幸はないです」と天使が言った

「たまに地獄から「妬み」「恨み」をふらせているみたいですけど」
「でも、それも人にとっては大事な栄養なんですよ」と言った。

もう少し、そんな話を聞きたかったが、
ふっと回りを見回すとあまりにも美しかったので、黙ってしまった。

しかし、僕にはなぜ、この景色が美しいのかは
まったく理解出来なかった。
説明しようにも、まったく説明出来ない。
たぶん、言葉に言い表せないものが
本当にうつくしいのではないだろうか。

しばらくして、また単調な階段にもどってしまった。
ぼくは、やぶからぼうに
「天国とは、いったいどんなところですか?」
と聞いてしまった。

「天国は人によって見え方が違います。
先ほどの風景も、実は全員が違う風景を見ていたんです。
見える風景は違っていても、感じる感情は皆同じものです。
それが、天国です」と言われて僕は納得してしまった。

どんな景色が見られるか、とても楽しみだった。
たぶん、絶世の美女が大勢待ち受けていて、
お酒や果物でもてなしてくれるのだろう。
もちろん、神様に失礼の無いようにしなくては
と、僕は心に誓った。

やがて天使が大きな声で
「つきました。ここが天国です」

僕が見た風景それは、

ありふれた学校の教室だった。
そう、僕が過ごした中学の教室だった。

やがて、先生が入ってきて
あいかわらず、つまらない授業をやっていた。
となりの、僕の好きなあの子は、まじめに授業を受けていたが、
僕が、じっと見つめているのに気がついたのか、
こっちを見てニコっと笑ってくれた。
しばらく、忘れていた感情だった。

やがて、授業も終わり、
家に帰るとお袋が、カレーを作ってくれていた。
なんでもない、ごく普通のバーモンドの中辛と辛口をまぜたやつだ。

今も懐かしい、
死んだお袋がいつも作ってくれた味だった。

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