クーリングオフ

「大根とはんぺん、あと〜」
「はい、あと何でしょうか?」
「あと〜、…………君!」
「黄身ですか?」
「はい」
「たまごで黄身だけは売っていないんですが」
「いや、じゃなくて、あなた!」
「わたしって事ですか?」
「はい!」
「高いですよ」
「もちろん!」
「じゃ、8億350円になります」
「安い!ははは」
「ははは」
「お支払いは現金になさいますか?カード?ローン?」
「え?、あ、カード…かな?」
「はい、ではカードをいただきます」
「はい」

ピー
「お客様、限度額30万じゃ、全然足りませんよ」
「え?え?じゃあ、ローンで」
「はい、じゃあ、ここにご署名ください」
「は、はい」

「お買い上げありがとうございます」

信じられない事だが、それから彼女と付き合い始めた。
もう、3日目にして同棲を始めてしまうほどだ。
信じられないくらい良く出来た女で、
俺はもう、7日目には結婚を申し込んでいた。

「たのむ!たのむから、結婚してくれ!」
「え、いいけど…」
「いいの?」
「いいけど…」
「いいけど?」
「結婚するともう、クーリングオフは出来ませんよ?」
「もちろん!離すもんか!」
「うれしい!」

知り合って、一週間で婚約、
僕たちはすぐ次の日婚姻届を出した。

幸せな結婚

そしてひと月がすぎた。

給料日である。彼女になにかおいしい物でもおごろうと、
銀行でお金を下ろそうとすると
ない?残高0円である。

いったい?

もしやと思い
慌てて家に帰ると玄関の前に黒服の男が立っていた。

「ちょっと、鈴木さん?」
「はい?」
「お金、銀行に全然入っていないじゃないですか?」
「え?」
「先日の典子さんの代金!」
「典子が何か買ったんですか?」
「ちがいますよ、典子さん自身の代金!あなた買ったでしょう。そこのコンビニで!」
「え!」
なるほど、それでつじつまがあってきた。
どんなシステムだか知らないが、
どうやら俺は嫁さんを買ったらしい
8億円で、
しかし、どうふったって8億円なんて、出せるわけが無い。
「と、とりあえず、待ってくれ。家で嫁と話すから」
といって、初日の今日は帰ってもらった。

家に帰ると嫁が泣いていた。
「私、ちゃんと言いましたよ。8億もクーリングオフも、お金持ってないんですか?」
「ああ、ごめん。あまりにも君が好きだったもんで」
「私だって、好きになってきた所だたのに…」
といって泣いている。

それから、1カ月、借金取りは、毎日表れる。
どんどん追い込みはキツくなるばかり
そりゃあ、そうだ。
8億を36回払いなんだから
月に2千万ちょいだ。
俺と嫁は毎日を借金取りにおびえながら過ごした。

2月目

「あはははは」
「あはははは」
ついに2人とも、狂ったのか?

「あはははは、よかったな〜」
「あはははは、よかったね〜」
「クーリングオフは出来なかったけど」
「8億じゃあね」
「払える分けないもんな〜、裁判所もすぐ自己破産認めたよ!」

それから、2人は貧乏でも仲良く暮らしました。

とさ

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