アンモナイトは以外とうまい!

ピンポンとチャイムがなって
はーいと出てみると
目の前には 白衣を着た初老の老人が立っていた。

「教授!」私は思わず声を荒げた。
それは、忘れもしない
私が大学生だった頃
大学には一風変わった教授がいた。

専門は物理なのだが、
髪は伸び放題、髭も伸び放題、
おフロもたまにしか入らず
それでいて、ファッションセンスは以外と良い
だから、女性にモテルけど、
相手にしない。
なんというか、世の浮浪者で一番モテル人って感じの教授で
難しい事をさらりと簡単にわかりやすく言ってくれる。
まさに、僕からはあこがれの人だったのだ。
風呂にあまり入らない事を除けば。

ただ、不思議なウワサも絶えなかった

たとえば、タイムマシーンを作っているとか、
反重力の金属の開発だとか
生物と金属の間の物質を発明したとか、
などなど、正確ではないが
裏では多少あやしい研究もしていたらしいのである。

そんな教授に実は私は大変かわいがられて
ことあるごとに、授業以外でも教授の理論に付き合わされていた。
ただし、授業はわかりやすいのだが、それ以上の研究内容を話すと
私ぐらいの凡人ではとても追いつけずに、ただ笑って聞いているだけだった。

そんな教授が失踪したのは私が卒業した年の夏休み明けであった。
うわさでは、タイムマシーンが成功して
未来へ旅立ったということだったが、
警察の調べでは、どうやら、女がらみのいざこざで
ずいぶん心を病んでいたようなので、
その事での失踪またはどこかで自殺?などしているのではないか
という線で落ち着いたらしい。

そんな教授が20年の時をすぎ
以前の若々しさで
今ここにいる。

「教授!、いったいどうしたんですか?」
「キ、キミ、成功したんじゃよ。」
「成功っていったい。まさか、タイムマシーンですか?」
私は興奮して教授に駆け寄ると
目をそらして
「う、うん、まあそんなようなもんだ。」
「すごいじゃないですか
 じゃあ、じゃあ、教授は過去から今やってきたんですか?」

なんだか、もじもじしながら、
「う、うん、そのことなんだが」
「教授、教授、すごいです。すごいです」
私は涙を流しながら、教授の肩を揺さぶった。
「教授、すぐ発表しましょう。世界があっと言いますよ。
 すごいです。すごいですよ」
「その事なんじゃが」
「はい?」
「すまん」
「は?すまんとはいったい?」
「いや、わしもまさかとは思ったんじゃが」
「表札を見たらなにやら教え子の名前だったんでな
 すこし、ほっとしているんじゃよ」
「あの〜、言っている意味がわからないんですが」
「うーん、まあ、ちょっと回りを見て見なさい」

そういって、回りを見回すと
いったいここは?
ジャングル?それにしてもものすごい原生林。
ここは?
「教授、ここはいったいどこなんです?」
「実は、わしもわからんのじゃが、たぶんカンブリアあたりだと思うのじゃが、君はどう思う?」
「カ、カンブリア!」
「いったいどうして?」
「いや、だからタイムマシーンが成功してな」
「だからって、なぜ僕まで」
「だから、すまんとあやまっておるんじゃ」
「だって、教授が失踪してから20年たっているんですよ」
「まあ、つまり、20年なんて波じゃ波!」
「波?」
「つまり、波の高い所はわしのところ、波の下が君のところだったわけじゃ」
「わけじゃって、、、」
「つまり、何億年もさかのぼる時に時空にひずみを波の振動で作り出したのだが、
 その作用の始点がわしで、終点が君だったわけじゃよ」
「じゃあ、未来にもどりましょうよ。せめて人類がいる時代に」
「いや、それがな、過去にはなんとか来れたが、未来はなちょっと」
「ちょっと?」
「無理みたいじゃ」
「えー」
「それに、一回で5億年もさかのぼってしまうということは、」
「いうことは」
「あと何回かやったら、
 生物さえもいなくなってしまって、
 食べ物もない状態になりかねんのじゃ」
「じゃあ、この世紀の大発見も」
「ああ、そういうことじゃ」

「あ、そうそう発見なら良い事もあるぞ。」
「え!、それは?」
「ん、それは」
「それは?」
「アンモナイトは以外とうまい!というとこだ」
と、ダンディな教授は大笑いをした。

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